日本の報道と産経新聞の一貫性

 題名はたいそうなことかいてますが、たいしたことは言ってません。ただ、いろんな意味で書かないといけないなと思ったため。

 2月11日に産経新聞掲載の長寿コラム「透明な歳月の光」において、作家曽野綾子氏により書かれた内容というのは、正直なところ、ひどく自分をうんざりさせるものでした。介護職を見下した書きぶりもさることながら、南アフリカアパルトヘイト制度廃止後に起こった一例を挙げ、(そういった障害が起こるから)居住地は別にしたほうがいい、つまりアパルトヘイトの本質である「居住の隔離」という部分について肯定するような表現を用いたわけです。
 このような表現に対して、抗議が来るのはもっともな話で、現に南アフリカの駐日大使や、NPO法人である「アフリカ日本協議会」から抗議の意思が示されているようです。


一方で、これについて日本の新聞社が報道したのは以下のとおり。


毎日新聞 産経新聞:曽野綾子氏コラムにNPO法人が撤回求め抗議文 毎日新聞 2015年02月14日 12時44分(最終更新 02月14日 15時35分)
朝日新聞  曽野氏コラムは「人種隔離容認」 南ア大使が産経に抗議 斉藤佑介 2015年2月14日23時00分
東京新聞 南ア大使、産経新聞に抗議 曽野氏コラムめぐり 2015年2月14日 23時46分(共同通信)
・読売新聞 なし

(web上に上がっているものだけなので、見逃しや夕刊に載せられたものもあるのかもしれません)

 大体2月14日の午後以降報道がされるようになったようです。


 しかしながらハフィントンポストの記事が、日本のこれらの記事の少なくとも半日以上前に書かれているとおり、海外の報道のほうが先行して本件に関して報道をしているわけです。思えば、日本国内のことにもかかわらず、海外のほうが先に日本の現状について報道するという状況が多いような気がします。今回もふくめ、NAVERのまとめ記事に挙げられていたとおり、日本の報道が先にたって報道されるものが少なからずあるということです。


 そんな状況を、冗談っぽく、日本の報道は「ガラパゴス報道だな」と思いつつ、こういった政治家や官僚、大物芸能人や有識者(有識かどうかは不明)の言動に対する批評が日本の報道機関からまず出てこないのは、結構深刻な問題なのではないかと思います。そこに問題がある、いや、世界的な価値観(民主国家的な視点?)から見て、問題であるという認識が日本の報道機関には欠けてしまっているのではないかと。

 最近報道の自由度ランキングが発表され、日本は韓国に続いて61位という先進国としてはかなり恥ずかしい位置にいいるのですが、本件のような火事が大火事になってからようやく腰をあげるような対応の遅い日本の報道姿勢というのが、まさに61という数字に表れてしまっているのだと思います。

 毎日新聞のこの記事『産経新聞:曽野綾子氏コラムにNPO法人が撤回求め抗議文 毎日新聞 2015年02月14日 12時44分(最終更新 02月14日 15時35分)』に対して、自分が以下のように、ブックマークをしたのは、まさに「毎日新聞としては、海外が先行して報道した内容を、いまさら日本の報道機関として、報道するということについて、どういう認識を持っているんですかね?」という点を少し揶揄した表現で聞きたかったからなのですが。

k-noto3 で、毎日新聞さんはどう思ってらっしゃるわけで?

 ということで、id:agathonさんが、自分の上のブコメに対し、「なんで毎日新聞の見解が関係あるんだ?」とお伺いいただきましたので、解答を書きました。さすがにメタブクマで書いていくのも面倒くさかったので、2年ぶりにブログを書いたわけですが。ただ回答になっているのかどうかまったくわかりません。というのも、そもそも、agathonさんの言う「なんで毎日新聞の見解が関係あるんだ?」という言葉自体が自分の馬鹿な頭では理解できないのですよ。

 agathonさんが「k-noto3は毎日新聞の見解と“何か”が関係があると認識している」と思っていて、その“何か”と毎日新聞の見解は関係ないだろうとagathonさんは思っているのだと自分は思うのですが、自分にはagathonさんの思っている“何か”が見当つかないので。申し訳ありませんが。コメントなりブクマなりでご教示いただけると幸いです。あと、id:toratorarabiluna273momomtanさんもidコールしておきます。agathonさんのコメントにはてなスターをつけてましたので、おそらく理解していらっしゃるのではないかと思いますので、ぜひお願いします。


 閑話休題



 2月11日という日付は、自分は今回の件で初めて知ったのですが、25年前ネルソン・マンデラ氏が刑務所から釈放されたという出来事があった日であるわけです。日本では建国記念日ですが、こういうことを言うと、日本の一部の方に怒られるのかもしれませんが、一時の政治的な事情で決められた一国の建国記念日よりは、遥かにネルソン・マンデラ氏他の人々の長年の運動の成果のほうが重要ですよ、世界にとっては。
 そんな日に、アパルトヘイトの本質を肯定するような文脈で文章を書いてしまえば、差別を受けてきた人や差別と戦っている人たちにとっては、けんかを売られてることと相違ないわけで、いくら本人がアパルトヘイトを肯定していないと言おうが、そんなことは「差別される人間に対する想像力がない」の一言で言いくるめられてしまうレベルの話なので、産経新聞曽野綾子氏は、大火事が日本全土を焼き尽くす前に、とっとと撤回するのが吉だと思います。
 特に、日本人の評判を貶めている、まさに国益に反する*1行為をしているわけですから。


 ということで、実際の産経新聞曽野綾子氏の反応はこちら


 うん、だめだこりゃ。


 おそらく来週の予算委員会や文教委員会では、曽野綾子氏に対する安倍首相の任命責任等々がいろいろ問われるんだろうなぁ。特に文教委員会では、道徳の副読本?に曽野綾子氏のひと言が載っているわけですから(p27)


 ちなみに産経新聞の小林毅産経新聞執行役員東京編集局長については、以下の3点をお伺いしたい。

1.ある特定の人種に対して「有害有毒な蟻」と表現し、「それを排除しなければならない」という表現は人種差別にあたるかどうか。
2.ある特定の人種のに対して「がん細胞」と表現することは人種差別にあたるかどうか。
3.新聞が、人種差別表現を無批判に載せることは、人種差別を肯定し、助長することにあたるかどうか。

 自分の認識で言えば、1および2および3、いわゆるすべてが「該当する」と思うのですが、おそらく、産経新聞にとっては、すべて人種差別ではないのでしょう。少なくとも、3に関してはそうでないのでしょう。

 というのも、1.については平成22年4月25日に産経新聞に掲載された、河添恵子著『中国人の世界乗っ取り計画』という本についての西尾幹二の書評の一節であり、2.については産経新聞出版である当該書籍の説明文
amazonで確認可)であるわけです。残念ながら、産経新聞には縮小版がないので確認ができませんが、当時自分が見て唖然とした覚えがあります。⇒サヨウナラ、産経新聞。

 そして、最後にこの本の売り上げの一部は産経新聞出版に入るわけです。

産経新聞は、一貫してアパルトヘイトはもとより、人種差別などあらゆる差別は許されるものではないとの考えです」という小林毅産経新聞執行役員東京編集局長の話が事実であるのならば、『ある特定の人種に対して「有害有毒な蟻」と表現し、「それを排除しなければならない」』レベルの内容を新聞に載せるのは産経新聞にとっては差別ではないのであって、おそらくこれからもそういうことはずっと行い続けるという宣言なのだろうと、曲解ですが勝手に解釈させていただきます。

ちなみに、自分は『ある特定の人種に対して「有害有毒な蟻」と表現し、「それを排除しなければならない」』というのは、人種差別であって、それを報道機関が無批判に記事として載せることは人種差別に当たると思いますので、産経新聞には一刻も早く、今までに行ってきた、「産経新聞としては差別という認識はないもの」について、認識を改め、関係各所に謝罪し、一貫した差別をやめ、再出発するよう求めます。日本の国益に反するとともに、日本に住む人々の名誉を無駄に、そして著しく毀損していますから。

*1:この言葉は自分の大嫌いな言葉ですが、産経新聞はよく使っているので、使ってみました。